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首都圏や海外に住みながら岩手で副業できるマッチングサービス。「RE:SiDE」が目指す未来とは?

岩手県の企業と首都圏の人材を副業でマッチングするサービスが、2020年にスタートした「RE:SiDE(リザイド)」だ。
https://re-side.jp/

運営は、NPO法人wiz(ウィズ)。東日本大震災を機に東京から岩手にUターンした5人が中心となり、Uターン促進をミッションに掲げて2014年に創設された団体だ。

義務的な帰省でなくなる。将来的にはUターンにもつながる

「RE:SiDE」を立ち上げるまで、wizでは、地域おこし協力隊の採用支援や、岩手での実践型インターンシップのコーディネート、岩手に特化したクラウドファンディングサイトの運営などを手がけていた。

副業マッチングはUターン促進にならないと考え、取り組んでいなかったが、新型コロナの影響でリモートワークが普及したことで、考えを改めたという。

首都圏での仕事経験を岩手で活かせるオンラインの場を提供すれば、首都圏に生活の基盤がある人でも、故郷の岩手と関われます。歳を重ねるにつれて義務的だった帰省も、事業者さんとの対面の打ち合わせなどを絡めると、前向きになれます。そうして徐々に関与度を高めていくうちに、Uターンにつながることも出てくるのではないか、と考えました
とNPO法人wizの黒沢惟人さんは語る。

NPO法人wizの黒沢惟人さん。「RE:SiDE」には「岩手に常に寄り添ってもらう」という意味が込められている

むやみやたらに誘わず、RE:SiDEのコンセプトに合った事業者を揃える

RE:SiDEの特徴は、岩手の企業に特化していることだけではない。

単に募集情報を載せるプラットフォームを用意するだけでなく、受け入れ事業者や副業人材と丁寧にコミュニケーションをとって、互いにメリットのあるマッチングをおこなうことも、大きな特徴だ。

まず、受け入れ事業者は、以前からwizが地域おこし協力隊やインターンシップなどで関わりのある事業者を中心としている。

だから、事業者さんのスタンスや経営者さんの人となりを把握しています。その上で、むやみやたらにお誘いするのではなく、RE:SiDEのコンセプトに合う方だけにお声がけしています」(黒沢さん。以下同)

どんな仕事を副業人材にお願いするのが良いかを相談しながら、募集内容を決めていく。ウェブマーケティングや、システムの再構築、事業コンセプトの再構築など、さまざまな案件があるという。

目先のタスクよりも、重要度が高いけど着手できていないことに着手したい経営者が多いですね

一方、副業者にも、面談でスキルや経験、要望などを細かく聞く。

すると、『この企業さんとマッチングしたら、こんなことができるのでは?』といったことが見つかります。その上で、私たちから受け入れ事業者さんに『最初の予定にはありませんでしたが、この方にこんな業務をお願いしてはどうですか?』と提案しています。場合によっては、副業者の方から『こんな関わり方ができる』と提案していただくこともあります

2~3か月以内で完了する業務からスタート

副業案件はSlackの会員専用コミュニティにも掲載されていて、それを見て問い合わせることも可能だ。その際も、wizのコーディネーターを含めた三者で話す場を持って、契約するかどうかを決める。

こうしてミスマッチを防いでいるが、仕事をしてみないとお互い分からないこともある。そこで、まずは2~3か月以内で完了する業務から始めるようにしている。

副業がスタートした後も、月1回はオンラインでコミュニケーションを取り、問題がないかどうか確認している。

1年以上続いている案件も。どんな人が続く?

マッチングに手間暇をかけるため、マッチング数は2022年3月時点で15件と少ないが、順調に推移している案件が多く、1年以上続いている人もいる。

ディレクションやマネジメントが得意な人や、中小企業診断士やITコンサルタントのような専門職など、「岩手に少ないスキルを持っている職種」の人が長続きしやすいという。

ただ、自分の専門のことだけをおこなう方よりも、守備範囲を少し超えたこともしてくれる『何でも屋』のような方が喜ばれます。また、コンサルタントといっても成果物を納めて終わりではなく、その後も伴走するプチ顧問的な関係性になると、長続きするようです

海外在住の副業人材も! 

ちなみに、wiz自体もRE:SiDEで副業人材を見つけている。マーケティング担当者がそうで、なんと海外在住だそうだ。

実家が岩手なのですが、親が転勤族だったので、私自身はあまり岩手とつながりがありませんでした。RE:SiDEを通じて、wizや岩手とのつながりができたことが嬉しいですね。

また、本業のウェブサイトの改善からは少し守備範囲が外れたSEOやSNSマーケティングの仕事をさせてもらうことで、自信もつきました」と語る。

首都圏だけでなく、岩手県内の副業人材も募集

今後は首都圏の人材はもちろん、岩手県内の20~30代の人にも副業をしてほしい、と黒沢さんは語る。

県内には、組織的に人材を育成する企業が少ないので、なかなかスキルアップやキャリアアップが図りにくい現状があります。他の企業で働くことは、自分のスキルやキャリアを見つめ直す良い機会になります。県内外の方たちにぜひRE:SiDEをご利用いただきたいです」(黒沢さん)


【問い合わせ先】
RE:SiDE(リザイド)
https://re-side.jp/

ABOUT ME
杉山 直隆
1975年、東京都生まれ。専修大学法学部在学中に、経済系編集プロダクション・カデナクリエイトでバイトを始め、そのまま1997年に就職。雑誌や書籍、Web、PR誌、社内報などの編集・執筆を、20年ほど手がけた後、2016年5月に、フリーのライター・編集者として独立。2019年2月に(株)オフィス解体新書を設立。『週刊東洋経済』『月刊THE21』『NewsPicks』などで執筆中。二児の父(11歳&8歳)。休日は河川敷(草野球)か体育館(空手)にいます