基本を知る

本当に実践的なスキルが身につくリスキリングとは? 学び直し、リカレント教育との違いは?

リスキリングとは何か?

最近メディアでよく聞かれるようになった「リスキリング」とは何でしょうか?

さまざまな定義がありますが、以下のリクルートワークス研究所の定義が、最も一般的と考えて良いでしょう。

「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」

近年は、技術やビジネスモデルが進化するスピードが速く、ビジネスモデルやスキルが陳腐化するスピードも速くなってきました。もはやひとつのスキルに習熟するだけでは、定年まで働き続けることができなくなっています。

また、人生100年時代、定年後もまだまだ長い人生が待ち受けています。充実した生活を送る上でも、お金の不安をなくす上でも、60~70代はまだまだ働かなければなりません。

こうした状況を考えると、ビジネスパーソンは時代に合わせて自分のスキルを更新していく必要があります。デジタルスキルがわかりやすい例ですが、必ずしもデジタルスキルとは限らず、人によっては異職種で必要なスキルを身につける必要もあるでしょう。

そこでリスキリングが注目されるようになったわけです。

政府が、2021年に発表した「第11次職業能力開発基本計画」や「骨太の方針」でリスキリングの必要性について言及したことで、さらに関心が高まっています。

学び直し、リカレント教育との違いは?

リスキリングとよく混同される言葉に「学び直し」「リカレント教育」があります。リスキリングと同じ意味のように言われることもありますが、実際は少し異なります。

「学び直し」は、リスキリングよりもう少し広い概念です。学び直しはビジネスに関係のない生涯学習も含まれますが、リスキリングはあくまで「ビジネスのための新たなスキル」をつけるためのものです。学び直しのなかにリスキリングが内包されているといえるでしょう。

一方、「リカレント教育」は、学校教育から離れ、社会人になってからも、生涯にわたって教育と他の諸活動(労働,余暇など)を交互に行なうことを指します。

こちらも学び直しと同様に、必ずしもスキルの習得とは限りません。また、企業内教育が含まれず、会社から離れて教育機関などで学ぶことを意味していることから、リスキリングをする時の学び方の一つと言えるでしょう。

スキルを学んでも、実践する機会がない

リスキリングの手段はさまざまですが、多くの人が共通して抱える悩みがあります。

それは「スキルを学んでも、実践する機会がないこと」です。

ビジネススクールで学んでも、難関資格を取っても、それを現実のビジネスの場で使わなければ、生きた知識にはなりません。

しかし、今の仕事では生かす場がないし、異動の希望をしても通らない。転職するほどのリスクは負いたくない…。結果、実践する場がないので、本当に実践的なスキルが身につかないというわけです。

実践的なリスキリング手段としての地方副業

どうすれば、リスキリングによって実践的なスキルが身につけられるのでしょうか。

その手段として注目されているのが、「地方企業やスタートアップでの副業」です。

地方企業はどこでも経営上の課題を数多く抱えています。しかし、課題を解決したくても、人材不足で取り組めない、という現実があります。

そのことに着目し、人手不足に悩む地方企業と自分のスキルを活かしたい首都圏のビジネスパーソンを副業でつなぎ合わせるマッチングサービスが、近年急増しています。

急増の背景にあるのは、ZoomやSlackなどのオンラインのコミュニケーションツールが発達したこと。距離が離れていてもスムーズにやり取りできるようになり、遠方に住む人に短時間の仕事をお願いしやすくなりました。

現在は、地方企業と同様に人手不足で悩むスタートアップも副業人材を募集するようになり、求人数が増えています。

地方副業やスタートアップ副業なら、高度な仕事が経験できる

副業というと時間の切り売りのような作業をするイメージがありますが、地方企業やスタートアップの副業はもっと高度な内容です。以下は実際に求人があった仕事の例です。

  • 新規事業の開発
  • ウェブマーケティング
  • SNSマーケティング
  • システム構築
  • 人事制度の設計
  • 経済効果算出のアドバイス

実践的なリスキリングがおこないたい人にとっては魅力的な仕事でしょう。

報酬は月数万円が相場ですが、なかには10万円を超える仕事もあります。

求人によっては、金銭的な報酬が発生しないプロボノの場合もあります。無償である分、仕事の難易度も副業ほどではないことも多いので、副業だと不安な人はこちらを選ぶのも良いでしょう。

地方副業を使ったリスキリングの5つのメリット

地方企業やスタートアップでの副業・プロボノには、次のようなメリットがあります。

1.学んだスキルを実践的なスキルに変えられる

座学で勉強した内容を副業やプロボノで活用することで、経験に裏打ちされた実践的なスキルを身につけられます。たとえば、新規事業開発のフレームワークを使って実際に事業開発をすれば、本当に役立つのか、何をどう使えば上手くいくのかなどが見えてきて、次につなげられます。

2.新たなスキルの必要性に気づく

実務をおこなうと、自分に足りないスキルが見えてくることもあります。販促をおこなううち、SNSマーケティングに関する知識の不足に気づくのはその一例です。それを学べば確実に役立つことがわかるので、学ぶモチベーションも上がるでしょう。

3.サードプレイスができる

地方副業やプロボノで関わることで、職場と家庭以外の第3の居場所ができます。それによって視野が広がったり、精神的に余裕ができたり、とさまざまな効果があります。

4.アウェーでもやっていけるようになる

同じ会社で働き続け、かつ年を重ねてくると、普段と異なる環境への適応力が下がってきます。あえてアウェーの環境に身を置くと、仕事の進め方や働き方など、自分の常識が必ずしも世間の常識とは限らないことに気づきます。すると、柔軟な見方を持てることにつながり、普段と異なる環境でも適応できるようになります。

5.自己肯定感が上がる

4と矛盾するようですが、地方副業やプロボノなどをすると、自分が培ってきたビジネススキルが外でも通用することにも気づきます。マネジメントスキルやロジカルシンキングなどの普遍的なスキルはどんな仕事でも通用するものです。こうして社外の仕事が上手くいくと、本業では得られなかった自己肯定感が上がり、新たなリスキリングをしようという意欲が湧いてきます。

当サイトでは、このような地方副業のマッチングサービスを取材し、掲載しています。ぜひ情報収集にお役立てください。

ABOUT ME
杉山 直隆
1975年、東京都生まれ。専修大学法学部在学中に、経済系編集プロダクション・カデナクリエイトでバイトを始め、そのまま1997年に就職。雑誌や書籍、Web、PR誌、社内報などの編集・執筆を、20年ほど手がけた後、2016年5月に、フリーのライター・編集者として独立。2019年2月に(株)オフィス解体新書を設立。『週刊東洋経済』『月刊THE21』『NewsPicks』などで執筆中。二児の父(11歳&8歳)。休日は河川敷(草野球)か体育館(空手)にいます