【30sta!な人 vol.3】「皆、できない理由をつくりすぎている」。仕事体験での言葉が、気後れした私を変えました

30~40代で異業種転職にチャレンジした先輩が体験談を語る、「30sta!な人」。第3回は、3年前にメーカーの営業から移住関連のアドバイザーへと転身した平井あやかさん(仮名・37歳)にご登場いただきました。

平井さんは、30歳を過ぎてからの転職活動に行き詰まっていましたが、「新しい視点を持ちたい」と仕事旅行社の「仕事旅行」に参加したところ、価値観が覆る経験をしました。それが転機となり、新しい世界に踏み出せたそうです。一体、どんな体験をしたのでしょうか?(text:井上かほる)

(プロフィール)
平井あやかさん(仮名)
1983年生まれ。大学卒業後、メーカーを経て、2018年に移住サポートを手がける団体に転職。移住に興味がある人の相談業務をおこなっている。

34歳で未経験の仕事に転職

――現在のお仕事を教えていただけますか。

平井:移住サポートの仕事をしています。相談に来た方がどんな暮らしをしたいのか、どういう生き方をしたいのかをうかがい、情報を提供しています。

――たくさんの知識が必要そうですね。

平井:相談にいらした方に幅広いサポートをするために、実際に移住先へ行ったり、調べものをしたりと、日々勉強の連続です。しかし、努力した分だけ、多様な情報が提供できるようになり、相談に来た方に、将来の可能性を広げてもらえる。人生そのものを豊かにできる仕事であり、とてもやりがいを感じています。

――以前も移住サポートに近いお仕事をされていたのでしょうか?

平井:いえ、これまではメーカーで営業や人事を10年以上していました。そのなかで、仕事の悩みというのは必ずしも仕事のことだけじゃないと気づきました。仕事を含めて、自分はこれからどこでどのように生きたいのか。それらをサポートできる仕事はないかと探していたときに、今の仕事の存在を知りました。

転職活動に行き詰まり、強制的に自分を変える必要があった

――未経験の分野かと思いますが、転職活動はスムーズでしたか?

平井:それが1年以上難航しまして……。人生そのものをサポートする仕事につきたいと考えていましたが、当時は自分が応募できそうな求人がなかなか見当たりませんでした。遠くないと思っていた人事の経験があっても、分野は違います。

加えて、そのとき34歳だったので、年齢的に役職経験があることを重要視する企業もありました。私にはその経験がなく、気後れして応募をためらってしまいました。かといって、以前のように営業をしたいとも思えなくて。どうすればいいのか、と行き詰まってしまったのです。

――そんな状況をどのように打開されたのでしょうか。

平井:転職活動が長期化していたこともあり、今までの私ではこれ以上前に進めないと思っていました。新しい自分になって、新しい視点で考える必要があると思ったのです。

そんなときに、「仕事旅行」というサービスをたまたま見つけて、参加してみることにしました。新卒採用の仕事をしていた時に、学生のインターンシップをうらやましく感じていたのですが、仕事旅行を見て、「大人向けのインターンシップもあるじゃないか」と思ったのです。


仕事旅行社の「仕事旅行」は、さまざまなプロフェッショナルの職場に、半日~1日だけおじゃまして、仕事の現場を肌で体感できるサービス。ホストによっては、見学や説明だけでなく、実際に手を動かして、仕事の一部を体験できます。さらに知りたい人は以下の記事をご覧ください。


――さまざまな仕事旅行のなかから選んだのが「旅行家になる旅」と「スパークリングレモン酒の開拓者になる旅」ですね。選んだ理由を教えていただけますか?

平井:強制的に自分を変える必要があると思ったので、自分が絶対に選ばないものを選びました。「旅行家」という仕事はこのとき初めて知りましたし、私は虫がほんとうに苦手なので農作業体験がある「スパークリングレモン酒の開拓者になる旅」も、今までの私なら選びません。なので、その2つを選ぶことにしました。

「できない理由をつくりすぎている」。今までの価値観を覆す気づき

――絶対に選ばないものを選ぶ。なかなかできないですよね。実際に参加されていかがでしたか?

平井:大げさに聞こえるかもしれませんが、今までの価値観を180度覆るような気づきを得ることができました。まったく持っていなかった視点でしたね。

――どのような気づきだったのでしょうか?

平井:「できない理由をつくりすぎているのではないか?」ということです。

旅行家になる旅では、世界中を旅している藤原かんいちさんのお話を聞きながら旅行家の視点を体験するのですが、彼の価値観に衝撃を受けたのです。さまざまな国や地域に行っている方なので、さぞ英語が堪能なのだろうと思っていたら、最初は「appleって……リンゴだっけ??」くらいの英語力しかない状況で、旅を始めたそうなんです。

――それは衝撃的です。

平井:その状態でどうして行けたの? と思いましたね。聞くと、「だって、行きたかったんだもん」と、子どもみたいに話していました。「働いて貯金もあるし、身体も健康。行かない理由はなかった。帰ってきて一文無しになっても、また働けばいいでしょ」「みんな、できない理由をつくりすぎているんだよ」と。そういう価値観はこれまでの私にはなかったので、驚きましたね。

それを聞いて、何か吹っ切れたのです。「じゃあ、私もできるじゃん。やりたいことをやればいいじゃん」と。

――たしかに。そういうお話が聞けると、自分の考えに固執しすぎていたのかなと思いますね。

平井:30代になると、何をするにしても、過去の経験からいろんなことを判断すると思います。転職をするときも、「今までの経験を生かせる仕事をしよう」「年収はこれぐらいないと厳しい」と過去を基準に考えるわけです。私もそうでした。

でも、それらを前提に考えなければならないという決まりはありません。

未経験でもやりたいことに挑戦できる。そう思えるようになりました。

――それで移住アドバイザーの仕事に挑戦できたということですか?

平井:はい。雇ってもらえるかどうか自信はありませんでしたが、応募してみたら、採用していただけました。

年収に関していうと、実は私の今の収入は以前に比べて半分くらいですが、反対に自由に使える時間が増えました。自炊をするなど工夫をするようになったので、趣味にお金を使うなど、今までと変わらない生活ができています。やってみると、意外と楽しく暮らせるものだなと思いましたね。

できないと思い込んでいたことができた

――「スパークリングレモン酒の開拓者になる旅」はいかがでしたか?

平井:「私にできるはずがない」と思い込んでいたことが、実はできるんだ、という経験ができました。自分で自分の可能性を狭めていたことに気づきましたね。

――何があったのですか?

平井:広島県三角島(みかどしま)という人口30人ほどの島で、酒造りを通した町おこしの話を聞いたり、レモン栽培の体験をしたりするのですが、私、ほんとうに虫が苦手で。レモン栽培の体験は、農作業があるのでどうなることやらと思っていたのですが、行くと別人のように苦手意識がなくなりました。

――なぜ、そんなことが起こったのでしょう?

平井:初めての土地で、初めて会う人たちと作業することで新しい自分になった気がします。「農作業ができる自分」に強制的に切り替わったような感覚ですね。雑草を抜いてダンゴムシがわらわらと出てきても、「はい、ごめんね~。どいてね~」と、淡々と作業ができました。終わって帰ってくると虫が苦手な私に戻るのですが、「私は、虫がいても農作業ができるのか」という事実に、私自身が驚かされました。

――それは、一種の成功体験といっても良いのでは?

平井:「虫がいても大丈夫だった」というだけの話なので、他の人から見たら本当に些細なことなんですけどね(笑)。

でも、どんなに小さなことでも、「苦手なことができた」という経験は、自己肯定感を高めてくれます。それが自信となって、まだまだ自分にできることはあるのではないか、と思える。未経験のことに挑戦する心理的なハードルは低くなりました。

――ほんの小さな成功体験でも、それを積み重ねていくことで、自己肯定感が高まり、チャレンジする勇気がわいていくのかもしれませんね。

決めつけないで、気の向くままに行動してみることが大事

――今までの自分なら選ばない選択をして新しい分野に転職した平井さんですが、30歳を過ぎてから挑戦するうえで大事なことは何だと思いますか?

平井:「自分はこれで生きていく」と決めつけないことだと思います。

転職をするとき、普通は「営業をやってきたから」「人事をやってきたから」とこれまでの経験を前提に考えますよね。でも、年齢や経験のなさを理由に諦める必要はないと思うのです。私自身も30代で未経験の移住サポートの仕事に就けたように、必ず何か道はあります。

それに、新しいことを始めてから別のことに挑戦することも悪くないと思います。今、働き方が変わってきていますが、同じように自分も変わっていきます。1度決めたから続けないといけない、ということはないと思いますね。

――たしかに、決めつける必要はないですよね。

平井:繰り返しになりますが、「みんな、できない理由をつくりすぎている」という藤原さんの言葉は、本当にそのとおりだと思います。

自分の気持ちが動いたら、できない理由をつくるのではなくて、「こうしたらできるかもしれない」という道を探してみる。きっと、あると思います。自分だけで探して見つからないようであれば、まわりの人に話したり、自分が知らない世界を体験できるようなプログラムやイベントに参加したり、というのもいいのではないでしょうか。グッと力を入れて踏みとどまらずに、気の向くまま、自分の直感を信じて、いろんな道を模索してみる。そんな生き方もありだと思っています。

……といろいろと話していますが、私も同じです。日々、迷いながら模索していますよ。

~取材を終えて~

30歳を超えてから未経験の分野に挑戦するとき、「自分には無理だろう」と思う方は少なくないと思います。経験のある分野にいたほうが、ある程度の予測がつきますし、苦労することも少ないでしょう。けれど、「ほんとうにこれでいいのだろうか?」「やりたいことは他になかっただろうか?」と思うのならば、強制的に自分を変えて新しい分野に挑戦するのも、いいのではないでしょうか。そこで何かが見つかれば、できない理由をつくらずに、やってみる。そうすると、新たな道を見つけられるのかもしれません。

井上かほるライター

投稿者の過去記事

北海道生まれ。北海学園大学人文学部日本文化学科卒業。
求人広告の営業職、専門学校の広報職を経て2019年よりライターとして活動スタート。
おでかけ情報誌、人材関連企業メディア、マンガレビューサイトなどに執筆、専門学校のタグライン制作や求人広告文制作など。
趣味はBリーグ観戦、落語鑑賞、映画鑑賞など観ること多め。休みの日は、妹と暮らすうさぎさんを愛でています。

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