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【交流から始める地域複業】岩手県の「遠恋複業課」で、ゆるやかに地域とつながる

こんにちは、「30sta!」編集長の杉山です。

複業で地域の課題に取り組んでみたい首都圏のビジネスパーソンと、課題を解決できる人材の不足に悩んでいる地方企業。そんな両者をつなぐ「地方複業マッチング」の仕組みが、ここ数年、次々と登場しています。

そのなかでも、比較的、気軽に参加できるプロジェクトが、岩手県が2018年にスタートした「遠恋複業課」です。

県からこの事業の業務を受託しているパソナ東北創生の林光人さんにお話をお伺いしました。

まずは企業担当者と少人数イベントで交流。誰でも参加できる

遠恋複業課は、岩手県内の企業や団体と首都圏のビジネスパーソンの複業マッチングをおこなうプロジェクト。首都圏に住みながら岩手と関わる「関係人口」を増やすことが、その目的です。

「『関係人口』の人と地域との関係は、遠距離恋愛に似ているところがあります。主従関係ではなく、遠距離恋愛のようなパートナー関係が築ければ、と考え、このようなネーミングになっています」と林さんは説明します。

他の複業マッチングサービスと異なるのは、「地元企業の担当者と複業希望者の人間関係づくり」から始めることです。

一般的に、地方複業のマッチングサービスは、一般的に、企業が募集している求人案件を見て、希望者が応募する形をとりますが、遠恋複業課は、それをしません。

岩手の企業の担当者と複業したい人たちを引き合わせるイベントを開催していて、まずは、そこで交流を深める形をとっています。

「この形態にしたのは、できるだけ多くの方に関係人口となっていただきたいから。間口を広く取っています。特定のスキルを求めているわけではないので、誰でも気軽にご参加いただけます」(林さん。以下同)

マッチングイベントでは少人数で複業希望者と企業の担当者が交流を深める。現在はオンラインで実施

オンラインでマッチングイベントを開催中

コロナ禍の現在は、オンラインで交流イベントを開催しています。しっかりとコミュニケーションがとれるよう、参加者数は、数社の担当者と10人程度の複業希望者、と少人数。

互いに簡単な自己紹介をした後に、担当者が今後の仕事の計画やそれに関する課題などをプレゼンします。その後に、担当者と複業希望者が個別に話せる時間を設けています。

イベント終了後、今後も関わっていきたい相手がいるかどうかを、担当者と複業希望者それぞれにたずねます。相思相愛ならば、実際どのように関わっていくかを改めてミーティングする、という流れです。

マッチング前に、現地を見学するフィールドワークを実施。現在はオンラインでおこなっている

「すぐに仕事が始まるケースもあれば、今後仕事が発生したときにお願いするケースもあります。関係人口として長い付き合いができる人と出会うことが目的なので、すぐに仕事が始まることにはこだわっていません」(林さん。以下同)

このような仕組みをとっているので、企業は多くの複業希望者との関係をゆるやかに築けます。だから、数か月間のコミットが必要な仕事だけでなく、スポット的に発生した仕事もお願いしやすくなります。複業希望者にとっては、さまざまなチャンスがあるわけです。

2年間働き続ける人もいればスポットで手伝う人も

スポット仕事の一例が、釜石のDMO(観光地域づくり法人)が、東京のイベントで物販のブースを出展した時。販売スタッフの一員として、首都圏在住の複業希望者に手伝ってもらったそうです。

一方、2年間にわたって複業をしている例もあります。大手IT企業で官公庁向け営業をしている40代のビジネスパーソンは、餅や和菓子のメーカーである大林製菓で、2018年から複業を始め、現在に至るまで、首都圏での餅の販売促進を手がけています。

複業希望者からの提案によって、仕事が生まれたこともあります。新しい企画を立ち上げたいと考えていた土木会社に、本業で広報業務をしている方が、社内報の制作を提案したところ、実際につくることになりました。求人案件に希望者が応募するのではなく、複業者のノウハウやスキルを生かしたつながりづくりなので、こういうことも起こります

20代から50代まで、多様なキャリアの人が参加

複業希望者とマッチングした件数は、2018年と2019年をあわせて、27件に上ります。

複業希望者は20代後半から50代前半と幅広い層が参加。東京が主ですが、今年はイベントがオンラインになったことで、他の地域からの応募もあるそうです。

「経歴は多種多様で、海外経験が豊富な大手企業にお勤めの方もいれば、中堅企業にお勤めの方もいます。フリーランスの方も増えてきました」

2021年もオンラインマッチングイベントを開催予定

2021年は、1~3月に、マッチングイベントがおこなわれる予定です。詳しくは、以下の岩手県のサイトをこまめにチェックしてみてください。

https://www.pref.iwate.jp/kurashikankyou/chiiki/1030148/index.html

【「遠恋複業課」のポイント】

  • 岩手の企業と複業希望者をマッチングする取り組み
  • 複業希望者の年齢制限はない
  • まずはイベントで交流し、親睦を深める
  • 仕事内容はライトなものもある
  • 報酬は、個々の企業と複業者の話し合いによって決まる

【問い合わせ先】

「遠恋複業課」事務局
(株)パソナ東北創生(令和2年度岩手県関係人口創出業務受託者)(担当:林)
TEL:070-3192-2653
E-mail:r2_enren@googlegroups.com
https://www.pref.iwate.jp/kurashikankyou/chiiki/1030148/index.html


※トップ画像は岩手県提供

ABOUT ME
杉山 直隆
1975年、東京都生まれ。専修大学法学部在学中に、経済系編集プロダクション・カデナクリエイトでバイトを始め、そのまま1997年に就職。雑誌や書籍、Web、PR誌、社内報などの編集・執筆を、20年ほど手がけた後、2016年5月に、フリーのライター・編集者として独立。2019年2月に(株)オフィス解体新書を設立。『週刊東洋経済』『月刊THE21』『NewsPicks』などで執筆中。二児の父(11歳&8歳)。休日は河川敷(草野球)か体育館(空手)にいます