【30sta!な人 vol.1】37歳で伊豆大島に移住し、未経験の農業をスタート。「何でも自分で決められる喜びが、そこにありました」

「30sta!な人」は、30~40代になってから未経験の仕事にチャレンジし、充実した毎日を手に入れた方にインタビュー。新しい仕事の醍醐味や苦労、未知の環境に飛び込む上で大切な心構え、転身を成功させるポイントなどをお伺いしていきます。

第1回は、東京で会社勤めをしていた37歳の時、東京都島しょ振興公社が主催する伊豆大島での「3泊4日農業就業体験」に参加したのをきっかけに、移住と就農を決意。現在では伊豆大島に移住し、農業を営んでいる田中和哉さん(仮名・41歳)にお話をお伺いしました。30代後半からのチャレンジ、うまくいったのでしょうか?(text:井上かほる)

サラリーマンから経験ゼロで伊豆大島へ渡り、就農

--就農2年目とのことですが、現在のお仕事について教えていただけますか?

田中ブバルディアという花とパッションフルーツ、ブルーベリーの栽培をしています。伊豆大島のブバルディアは東京市場においてシェアNO.1を占めていて、島を代表する品目なんですよ。

いまの時期(※取材は2020年8月に実施)はブバルディアとパッションフルーツの収穫が重なり、忙しいですね。朝5時から8時まで畑作業をし、そのあとスーパーや直売所への出荷作業。日中は暑くて外での作業ができないので、屋内で花を束ねるなどの加工作業を行っています。

伊豆大島名産のブバルディア。東京市場でシェアNO.1!

--田中さんは、もともと農業のご経験はあったんでしょうか?

田中:いえ、まったくありませんでした。大学を卒業後、数社でサラリーマンをしていました。「まさか、自分が農業をやるとは」という感じで、友人に話したら驚かれましたよ。

伊豆大島は東京から近いですし、山があったり海があったりと、とてもいい環境だと思っていて。自転車が好きなので、しばしばツーリングをしていました。

あるとき伊豆大島から帰ってきて、妻に「伊豆大島の『3泊4日農業就業体験』に行きたい」と言われたんです。僕は、そういう本気のイベントはやめておいたほうがいいんじゃない? と止めたんですけど、「じゃあ、私ひとりで行く」と言われて(笑)。

--奥様、すごいですね!

田中:ひとりで行かせるのもちょっとなあと思ったので、一緒に行きました。で、行ったら僕のほうがハマってしまったという(笑)。

--それは驚きです! ハマったというのはどのようなところに?

田中:数回訪れたことがあるので、環境も人もいいことはもちろん知っていましたし、「これで仕事があったらなあ」という思いはありました。

体験会では、ブバルディアやキキョウランなどの花の栽培作業を体験するんですが、そこで主にキキョウランの栽培をしている『辻農園』の辻さんという方にお会いして。その道50年以上の大ベテランなんですが、働きながら楽しそうに生きている方だなあと感じました。辻さんの姿と生涯現役で働ける仕事であるということに、感銘を受けたんです。

いま栽培しているパッションフルーツの苗は、辻さんからいただいたものなんですよ。

3泊4日の就業体験では、実際に花き農業のお手伝いをすることで、現場のリアルを体感できる
農家の元に行き、ハウス栽培の現場も見学できる

自分で計画して実行できる醍醐味。すべては自分次第

--体験会に参加されたあと、サラリーマンとして働く日々に戻られたかと思います。その後、伊豆大島に来るまでにはどれくらいの期間がありましたか?

田中:2~3ヶ月ですね。退職の意思を伝えて、就農するための研修先の面談を受けて。2017年4月から「大島町新規就農者支援研修センター」で2年間の研修を受けることになりました。

--早いですね。不安や迷いはなかったんでしょうか?

田中:前職の会社では10年弱ほど勤めていました。勤務年数を重ねるうちに「このままだと、この先も同じことをやり続けるのではないか?」「出世してマネジャーになって、自分は満足なのだろうか?」と思うようになっていました。面白さを感じなくなっていたんですよ。それに、「今までと違った、新しいことがしたい」という思いもありました。

もう1社経験してから伊豆大島に行くことも考え、転職活動もしましたが、伊豆大島のことが忘れられず、すぐに行くことに決めました。

それと、東京都の支援制度があったことも大きな理由です。山村・離島振興施設整備事業という施設整備や機械導入に係る経費の4分の3を補助される制度があります。

また、研修期間には住宅の無料貸与がありますし、研修中に生産して販売した売上金は研修生同士で分けて支給されます。現役農家の方や専門家から病害虫から作物を守る方法や収穫日の調整法などの実務的なこと、栽培技術に関する基本的知識や経営的なことなどをひと通り学ぶことができます。

--サポートがあるのは、ありがたいですね。

田中:ただ、その支援制度を受けるには申請書類作成などの手続きがあり、畑作業などもしながらだったので大変でした。

実はこの研修を受けて就農したのは僕の代が初めてだったので、行政機関の方と手探りの状態でしたが、「こんなサポートが欲しい」という要望を一つずつ形にしていただくことで、新規就農がしやすい環境が整ってきていると感じます。

--現在の仕事や働き方の醍醐味はどんなところにありますか?

田中:どんなことにしても自分で決められる部分が大きいことが、醍醐味ですね。今まではパッションフルーツをそのまま出荷していたけれど、次は加工品に挑戦してみる。ブルーベリーは本来、収穫できるようになるまで5年かかりますが、養液栽培システムを導入することで、2年で出荷できるようになる。自分で計画して実行できるのは、おもしろいです。反対に、何もしなかったら収入ゼロ(笑)。そういうことも含めて、サラリーマンとは違いますね。

仕事も人生も、これまでの経験は必ず役に立つ

--田中さんはサラリーマン時代の経験で役に立ったことはありますか?

田中:たくさんありますよ! たとえば簡単な書類作成もコスト管理の経験も役に立ちますし、営業職で多くの立場が異なる方とコミュニケーションを図った経験は農家の方達と接する上で役に立ちました。

また、サラリーマンの経験はもちろん、出荷先である本土で生活していた経験があるので、多くのお客様の生活やニーズを想像することができます。これまでの人生経験も含めて何でも役に立ちますし、ムダなことはないと思いますね。

--とても背中を押されるお言葉ですね。ちなみに、いまサラリーマンの方は将来の自分のために何をするといいでしょうか?

田中:会社の数字」に注目するといいと思います。会社がどのように売上を上げているのか、その仕組みはどのようなものなのか。どのようにお金が入ってきて、どのように出ていくのか。

当たり前ですが、経営をしていくことで大切なのは限られたお金をどう使って利益を出すのか、ということ。それを理解しているかどうかで、その経営が成功か失敗かが決まると思っています。そうしたセンスは会社勤めをしているときでも磨けます。僕は意識的に磨いてきたし、それがいま役に立っていると実感しています。

大切なのは、自分の勘を信じること

--田中さんは現在、また新たなチャレンジをしているとのことですが、どのようなことをされているのでしょうか?

田中:来年夏にブルーベリーの観光農園をオープンしようと思っています。現在は、ブルーベリー農園を営んでいる方にお願いして運営方法を見学させてもらったり、アドバイスを受けたりしているところです。妻とも相談しながら準備を進めていますよ。

--やりたいことがどんどん拡大しているんですね。最後に、これから新しいチャレンジをしようと考えている方にメッセージをいただけますか?

田中:新しい仕事でやっていけるのか、本当にやりたいのかどうかで悩んでいるなら、とにかく試しにやってみることをおすすめします。頭で考えているだけではわからないからです。僕の場合は、就業体験や2年間の研修を経て就農したわけですが、やらないとわからないことがたくさんありました。

ここまでいろいろとお話してきましたが、僕はダメだったら潔く帰るつもりでいます。ボロボロになっているのに、留まっていても仕方ないですから。だけど、「チャレンジした」という経験は残ります。その経験は、今後の仕事や人生においてきっと何かの役に立つと思うんですよ。

--たしかに、やらないと判断はできないですね。それに、田中さんのお話を聞いていると、せっかく興味を持ったのにチャレンジしないのは、もったいないなと思います。

田中:そうですね。あとは、自分の勘です。気になったら行ってみて、自分の目で見てみる。仕事のことや、働く場所の雰囲気、まわりにいる人や住んでいる人の様子。そういったことを含めて、勘がすべてだと思っています。30歳になれば、社会人経験も人生経験も積んでいるので、自分で判断できるはずです。自分の勘を信じて、チャレンジしてほしいと思います。

~取材を終えて~

何事にも腰が重い私にとって、田中さんの決断力や「やってみないとわからない」という考え方に触れることができ、とても貴重な時間でした。そして、「ダメだったら潔くやめる」というお言葉。こういったところがチャレンジできるポイントなんだろうなと感じました。田中さんのように先を走る先輩が身近にいたら、自分の道筋も明確に見えてきそうです。来年のブルーベリー農園のオープン、楽しみにしております! 


【ご案内】「伊豆大島・農業就業体験」、2020年も開催されます!

田中さんが移住・就農するきっかけとなった「伊豆大島・農業就業体験」。
2020年は10月に、3泊4日で開催予定です。

40歳ぐらいまでの方で、就農を真剣に検討している方なら、参加できます。
詳しくは以下のURLをご覧ください。

伊豆大島での就農に興味がある方は、参加してみては?
https://www.tokyoislands-net.jp/corporationnews/7218

井上かほるライター

投稿者の過去記事

北海道生まれ。北海学園大学人文学部日本文化学科卒業。
求人広告の営業職、専門学校の広報職を経て2019年よりライターとして活動スタート。
おでかけ情報誌、人材関連企業メディア、マンガレビューサイトなどに執筆、専門学校のタグライン制作や求人広告文制作など。
趣味はBリーグ観戦、落語鑑賞、映画鑑賞など観ること多め。休みの日は、妹と暮らすうさぎさんを愛でています。

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